彼女を手に入れるのは、一体誰?
其の1 狼達と迷える子兎
。氷帝学園に通う、現在中学2年生。
身長、約155cm(四捨五入)。体重は秘密。
学力、運動神経ともに、平均並み。
特技などは特になし。
至って普通の、ごくごく有り触れた女子中学生。
のはずだが。
私の平穏な生活を、破壊していく者達がこの学校にはいる。
これは、その者達と私が繰り広げる奮闘記である。
要注意人物@ 3年・芥川慈郎
「ー、捕まえたー!」
「な!?どこ触ってるんですか、芥川先輩!!」
「えー、の身体?」
「そういうことを聞いてるんじゃありません!!早く離れてください!!」
「イヤ。離れない。」
芥川慈郎。
会う度に人に抱きついてくる、極まりなく迷惑な人物である。
しかも、1度抱きついてしまったらなかなか離れようとはしない。
引き剥がすのに相当の体力と根気を必要とする。
おかげで、彼に会った後はマラソンで3キロ走ったくらいの疲労感を伴う。
要注意人物A 2年・鳳長太郎
「あ、さん!こんなところで何してるの?」
「何って、ゴミを捨てに行ってるんだよ。当番だから。」
「へぇ・・・。で、その隣の男は何?」
「え?同じ当番の人だけど?」
「おい、テメェ、何の隣を歩いてんだよ。」
「お、鳳君?僕はさんと当番が同じなだけで・・・。」
「早く退けよ。ほら、早く。」
「は、はいぃぃ!!!」
「彼、行っちゃったみたいだから俺と一緒に行こうか?」
「あ、はは・・・。うん、そうだねぇ・・・。」
鳳長太郎。
その優しい笑顔とは裏腹に、急に恐ろしい人格に豹変する時がある。
最近では、笑顔さえもが真っ黒に見えてきた。
関わりたくないのが本音だが、同じ学年ということもあり、出くわすことも多い。
色々な意味で要注意人物だ。
要注意人物B 3年・向日岳人
「おーい、!こっち来てみな!!」
「?なんですか、向日先輩?」
「ほら、見てみろよ!コレ。限定品のチョコなんだぜ!!」
「あ、そうなんですか。へぇ、凄いですね。」
「だろ!!特別ににだけ分けてやるよ!!」
「そんな・・・。いいですよ。先輩が全部食べちゃってください。」
「お前だから分けてやるの!気にすんなよ!!」
「はぁ・・・ありがとうございます。」
向日岳人。
いい人であるには変わりないのだが、そのテンションは如何なものかと思う。
正直なところ、付いていけない。
ただ、先程の2名に比べれば、比較にならないほど許せる範囲である。
もう少し落ち着きを持ってもらえれば、とてつもなくいい人なのだが。
超・要注意人物@ 3年・忍足侑士
「、今日も可愛えな。見惚れてまうで、ホンマに。」
「お世辞はいいです、忍足先輩。それよりも2年の校舎に何の用事なんですか?」
「お世辞なわけあるかい。俺は本気や。」
「・・・・それで用事は何なんですか?先輩は3年でしょう?」
「つれへんなぁ・・・。こんなに俺はを愛してんのに・・・。」
「ですから、用事があったんでしょう?いいんですか?用事を済まさなくて。」
「俺の用事はに会いに来ることやv」
「・・・・・はぁ(深い溜め息)。」
「そないに喜ばれたら、俺まで嬉しゅうなるでv」
「もう、いいです・・・。」
忍足侑士。
とにかく会話が成り立たない。
一方的に話を進めていく上、私のことをわざわざからかいに来る、この上なく悪質な性格の持ち主。
意味不明な言葉を発したり、思っても無いことを話すことからして、馬鹿にしているのはほぼ間違いない。
よく2年の校舎に来ていることから、暇人のように思われる。
超・要注意人物A 3年・跡部景吾
「じゃねぇか。何だ、俺様に会いに来たのか?結構可愛いとこがあるじゃねぇの。」
「いえ、たまたまここを通りすがっただけですけど。」
「そうか。そんなに俺のことが愛しいか。」
「そんなこと一言も言ってないです。」
「わざわざお前が俺のところに来なくても、今から俺が行こうと思っていたところだ。」
「ですから、跡部先輩に会いに来たわけではなくて偶然に会っただけなんですって。」
「隠さなくてもいいぜ・・・。恥ずかしがる気持ちも分からんでもないがな。」
「私は何も隠してませんよ。頭大丈夫ですか先輩。」
「お前も罪な女だぜ・・・。この俺様を惚れさせるんだからな。」
「ダメだ、もう。」
跡部景吾。
重度の妄想癖の保持者。
ナルシスト度はかなり高め。
会話が成立しないどころか、勘違いも甚だしい。
しかも、勝手に話を作り上げる傾向があり、大概がロクなことではない。
忍足侑士と同様、人をからかって遊んでいる性格破綻者。
この2人には、細心の注意を払わなくてはならない。
以上、私の平穏を蝕む者達。
これらの人物の共通点は、テニス部レギュラーであるということ。
しかし、テニス部の中にも私の心強い味方がいる。
心強き味方@ 3年・宍戸亮
「、どうしたんだ?何か顔がやつれてねぇか?」
「あぁ・・・。私のオアシス・宍戸様・・・。」
「は?何言ってんだ?大丈夫かお前。」
「はっ!!意識が飛んでいました!何でもありませんよ、宍戸先輩。いつものことですから・・・。はは・・・。」
「悪ぃな・・・。何だかウチの連中が迷惑掛けてるみたいで・・・。」
「宍戸先輩が謝ることではないですよ!!私はこうやって先輩とお話しているだけで、随分と癒されますから!!」
「お前な・・・そういうこと言うのは反則だろ・・・。」
「先輩、どうしたんですか!?顔が赤いですよ?風邪でも引かれたんですか!?」
「な、何でもねぇよ!俺は健康なのが取り柄だからな!」
宍戸亮。
あの奇怪なテニス部メンバーの中で、唯一普通を保っておられる私の心のオアシス的存在の人。
いつも私のことを気に掛けてくれる、とっても素敵な先輩。
先輩のことは本当に尊敬している。
心強い味方A 2年・樺地宗弘
「あ、樺地君!今から部活?」
「ウス。」
「あ、やっぱりそうなんだ。頑張ってね!決してめげてはダメよ!!あいつ等に負けてはいけないわ!!」
「ウ、ウス。」
「大丈夫!私達には宍戸先輩が付いていてくれるから!」
「ウス。」
「諦めない気持ちさえあれば、道を切り開くことも不可能じゃないわ!頑張りましょうね、お互い!!」
「・・・ウス。」
樺地宗弘。
寡黙なため、あの跡部景吾にこき使われてしまっている被害者の1人。
優しいため、反発することも無く従うその姿は、涙を誘う時さえある。
これが私に関わる主な人物達。
縁を切ってしまいたい人物が9割を占めてはいるが。
「あ、やんか!部活見に来てくれたんか?」
会ってはならない人物に会ってしまった。
今日は厄日かもしれない。よりによって忍足先輩に出くわしてしまうとは・・・。
「いえ、今から帰るところですけど。」
「そうかそうか。ほな、コートに行こか。」
「人の話を聞いてましたか?私、帰ると言ったんですけど。」
「はよ行くで。部活始まってまうから。」
さっきの紹介文訂正。
忍足侑士。この人も妄想癖保持者だ。
私はズルズルと引きずられるように、テニスコートの方へと連れて行かれた。
「あのー、質問してもよろしいでしょうか?」
「ええで。どないしたん?」
「なぜ手を繋いでらっしゃるのでしょうか。」
気が付いてみれば、しっかりと握られている私の左手。
もちろん、その犯人は忍足先輩以外誰でもない。
「繋ぎたかったからv」
「それは答えになっていませんが。」
「腹が減ったら何か食べる。眠くなったら寝る。手を繋ぎたかったから繋ぐんも、それと同じことや。」
根本的に何かが間違っていると思う。
いかにも正しい正論を述べているようで、実際言っていることは滅茶苦茶だ。
「あー!!忍足何してんのー!?」
ヤバイ。また厄介な人に会ってしまった。
あの輝く金色の髪は、芥川先輩に間違いない。
今までの先輩の行動からしておそらく・・・
「何で手繋いでんの!!忍足だけズルイ!!」
あぁ・・・やっぱり。
やっぱり抱きつくんですね、先輩。
もう、何なんだコレ。
左手は忍足先輩に手を繋がれ、右半身は芥川先輩に抱きつかれ・・・。
芥川先輩、めっちゃ暑いんですけど。
やっと・・・やっとテニスコートに着いた・・・。
ようやく私は解放される。長かった・・・。
待てよ?
今、私がいるのはテニスコートの前。
テニスコートといえばテニス部。
テニス部といえば・・・・・・・・。
!!!!!!!!!!
私はデンジャラスゾーンに足を踏み入れてしまった。
テニス部ということは・・・・
奴等がいる!!(恐怖)
「、また俺様に会いに来たのか?まったく、仕方の無いヤツだな。」
「何言ってるんですか跡部さん。勘違いはみっともないですよ。」
「アーン?鳳、もう1度言ってみろよ?」
「ええ、いいですよ。さんは俺に会いに来たんです。別に跡部さんに会いに来たわけじゃないと言ったんです。」
鳳君、真っ黒だよ・・・。
微笑みが逆に怖いし・・・。
そういうことではなくて!!
やはりいた!!いないはずがないじゃないか!!
テニスコートにあの人たちがイナイワケガナイ・・・。
くっ・・・。私としたことが・・・。
忍足先輩を振り払ってでも逃げていればよかった・・・。
あぁ・・・神よ・・・あなたは私に一体何の恨みがあるというのですか・・・?
「おい!何でこんなとこに来てんだよ!平気か!?」
その声は!!!
我がオアシス・宍戸様!!
「宍戸先輩!!忍足先輩に無理やり連れてこられたんですよ!」
「そんなことは今はどうでもいい!跡部と長太郎が揉めてる隙に、お前はもう帰れ!ここにいたら危ねぇだろ!」
前言撤回・・・!!
神よ、ありがとう!!この世に宍戸先輩という人を生み出してくれて!!
あ、生み出したのは先輩のお母様だった!
「ありがとうございます!!このご恩はいつか必ず・・・!!」
「分かったから今のうちだ。上手く逃げろよ。」
もしかしたら宍戸先輩は神か仏か・・・。
いや、それ以上の方であるに違いない!
感謝します、宍戸先輩!!
あなたの優しさ、この、決して忘れはいたしません!!
そうして私は無事、家へと帰ることが出来た。
死神に呪われたような私の生活は、宍戸先輩のおかげでどうにか成り立っている。
私の苦悩の日々は続く・・・。
◇◇
あとがき
キャラ壊。書いているのは楽しいです。